ティコの灯台

すべてのよだかに灯を。

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

チューニング

解き放たれた鋭い糸が布の柱に絡みつくそうかと思えばほつれ…途切れ、反発し/受け入れる 友よ 夜を明かそうひとすじの髪の先に点った燈だけを頼りにその傷はわたしがつけた傷輸血のように君のなかに押し入って・ほつれ・途切れ・反発し・受け入れるために巡…

テセウスの船

"Who the hell is he?" 有機質に取って代わる無機質隊列は交わり蠢きかたちを変える古い設計図の羊皮紙は燃え落ちたもとの顏がどんなだったかも解らない怒りは痛みは( )は確かにここにここに在ったのに気付けば、波音は遠く 問1.記憶は誰のものか 一歩一歩進…

きれいな人

あなたはきれいな人だからつくりものみたいにきれいな人だからAM5:02の雪よりらむねのびんに沈む月よりあなたはきれいな人だからがらすの魚がりんりんと音をたてて飛んで星になれずに割れたってそのほそい手足のむかう先蹴立てた灰が肌を裂いたって白いスカ…

ある夜のはなし

遠い、遠い星の距離を 雪の粒がつないで今夜だけの星座をつくる いつかの冷たい夜に くしゃくしゃに丸めて放ったねがいも 碧に 緋に かがやきながら いくつかの冒険を超えて ようやくここへ ようやく、ここへ あなたに"お帰り"を言ってもらいに まもなくドア…

むすんで ひらいて

無理にとは言わないけれど その手に握りしめてるそれは 冷たくて 悲しくて 寂しくて ちょっと大げさなそれは そりゃあ綺麗だけど とても綺麗だけど 手放したほうがいい その先っちょの尖ったとこが君の手のひらに食い込んで 痛いでしょう それからもう片っぽ…

ボイス

心臓の裏の柔らかなところを かき混ぜ 引き裂いて 生まれ出ようとしている それは 埃を被って縮こまったそれは ひどく醜く透明なそれは その声は 呼び止めるためにあるのでしょう 気付かれるためにあるのでしょう たいせつなあなたが 見向きもされないままで…

風を切る肌の熱さを 瞼の裏にひらめく鈍い瞬きを 不自由だと嘆く手足で わずかに わずかに 手繰り寄せる 私たちは目隠しをしたまま 暁の空を飛んでいるのだ

邂逅

今しかない 今しかないの "不十分だ"ってだれかが言ったとしても 十分になるのを待ってたら次にいつ会えるかわからないわ 私たちときたら 不十分のふの字にも満たないくらい不十分なのだから 紙切れの上のカミサマサンが "まだ早い"って言ってたとしても 私…

はーとぴーす

呼吸をするたびに またひと粒 ぼくのカケラが宙を舞う 公園の水場の蛇口の取っ手 水たまりを踏んで跳ねた泥 一段高くした自転車のサドル ぼくの"外側"と触れ合ったぜんぶ その数だけのカケラになって ふわふわ浮いてる ころころ転がる ぼくのカケラ おんなじ…

missing

誰そ彼の幻聴 地に満ちて残響 金木犀の昨日も白雪の明日も今は遠く ずっと昔に別れたはずの 古い街並みが肌を濡らすから 空を食む紺青に 星を刺して今を留める どうかあなたが帰るまで 世界がどこにもいかないように

嵐の幕間

その日はばかみたいに風が強い日で どうにもこうにもむしゃくしゃしていて あげく転んで泥だらけになって このまま死んでもいいなあなんて ぼんやり空を見上げたら その日一番の強い風が 希望どころか絶望まで 無遠慮に 吹き散らしていったもんだから ついで…

セントエルモ

噛み殺した嗚咽が零れる ナイフみたいに握りしめたペン すました白をひっかいて、刻まれた 「HELP ME.」 滴って、喉を焼き コンクリートの床に落ちる 赤を赤といえば銃で撃たれた 傷以外に得たものはない では、失ったものはあったか? 置き去りにした昨日も…

こひ

あの日 ほそい ねむの木の下で交はした うすいうすい玻璃のわれるやうな くちづけに解かされて わたしののどの奧の奧のはうに 流しこまれた 鈍いいろのそれが たぶん おそらく "こひ" といふやつが 春の子馬のやうに いつとなく わたしの中を駈けまはるので …