ティコの灯台

すべてのよだかに灯を。

アネモネ

 

また、ドアが叩かれる

 

「…どうぞ」

 

「うっとり」が「がっかり」に壊されないよう、冷えた両手に柔らかく握りしめて、

「この音は少し違うかもね」

なんて、舞い上がりそうな心に「じっくり」を被せて大人しくさせる。

 

ドアが開く

 

か細い隙間から覗くつま先が

箱の中の猫の生死を決めてしまう前に

深く、

吸い込んだ空気

春の花の香りが混じる

 

 

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