ティコの灯台

すべてのよだかに灯を。

こひ

 

あの日

ほそい ねむの木の下で交はした

うすいうすい玻璃のわれるやうな

くちづけに解かされて

わたしののどの奧の奧のはうに

流しこまれた 鈍いいろのそれが

たぶん おそらく "こひ" といふやつが

春の子馬のやうに

いつとなく わたしの中を駈けまはるので

わたしは

あなたを忘れてしまふことが

つひに できずに いるのです

 

f:id:winpy68:20171204001319j:image